日本の美を求めて

東山魁夷さんの本です。
好きな言葉書き出します。
 
どんな場合でも、風景との巡り会いは、ただ一度のことと思わねばならぬ。
自然は生きていて、常に変化して行くからである。
また、それを見る私たち私達自身も、日々、移り変わっていく。
生成と衰滅の輪を描いて変転していく宿命において、自然も私達も同じ根に繋がっている。
 
人は、意思するところに行為がある、といわれます。
これはいうまでもないことのようですが、しかし、はたしてそうでしょうか。
意思するということは、自己という主体から発するものか、
あるいは自己の外に発するものが自己に伝わって、自己の意思するように導いてくれるものなのか。
自己を無にするばあいに、はじめて自分の外から発する真実の声が聞こえるのではないか。
その真実の声に合致した行動がとれるのではないか。
 
私が好んで好んで描くのは、人跡未踏といった景観ではなく、
人間の息吹がどこかに感じられる風景が多い。
しかし、私の風景の中に人物が出てくることは、まず無いと言ってよい。
その理由の一つは、私の描くのは人間の心の象徴としての風景であり、
風景自体が人間の心を語っているからである。
 
私は、『道』という絵がとても好きです。
両側には緑があるだけの道がまっすぐと伸びていて空が見える絵。
 
これで何故心惹かれるか少し分かったような気がします。
自分の歩む道が、こんなにもまっすぐに気持ちよくあればいいなという憧れなのだと思います。
 

日本の美を求めて (講談社学術文庫)

日本の美を求めて (講談社学術文庫)